2021年3月8日月曜日

津波の黙示録的イメージと池田学の絵画

 TSUNAMI image and IKEDA Manabu

2 0 1 1 年3月 1 1 日の大震災から1 0 年になる。「津波」は今では「TSUNAMI」となって、外国映画にもこの言葉が普通に出てくる。黙示録の世界観がある西洋では、津波はこの世の終わりのイメージとして描かれてきた。オナルド・ダ・ヴィンチの「大洪水」などたくさんの恐怖の洪水の絵画がある。ジョン・マーチンの「大洪水」(部分)もそうで、巨大な波が、人間の一団をのみ込もうとしている阿鼻叫喚の瞬間を描いている。(画像:「ジョン・マーチン画集」より)


このような津波の怖いイメージは映画にも度々登場する。「2 0 1 2」(2 0 0 9 年)では、大地殻変動が起き、巨大津波が都市をのみ込んでしまい、陸地は陥没して海中に沈んでしまう。黙示録に書かれた人類絶滅のイメージをそのまま視覚化している。


津波大国なのに、日本では不思議と津波が描かれないが、例外は池田学くらいか。イマジネーション豊かなスケールの大きな絵で、津波にのみ込まれる世界の終わりを描いている。しかしジョン・マーチンのように、迫ってくるようなリアルな恐怖感はなく、むしろ美しく繊細な絵画だ。大津波が神の怒りだというような黙示録的な感覚のない日本人の絵画なのだろう。上から、津波と復興を描いた「誕生」、都市が水没していく「箱舟」、原発事故のイメージの「メルトダウン」(いずれも部分) (画像:「池田学  The Pen 展」(2 0 1 7 年)図録より)


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