2021年2月12日金曜日

キングの塔(神奈川県庁舎)のデザイン

The architecture of the Kanagawa prefectural government office 


「キングの塔」(神奈川県庁舎)は、日曜画家のスケッチポイントとして人気だが、たしかに重厚な外観は絵になる。昭和3年に完成した建築だが、設計コンペで当選した小尾喜郎という建築家の案に基づいている。当時の応募図面が残っていて、その中にパースもあるが、ほぼ原案の通りで完成していることがわかる。(神奈川県立歴史博物館所所蔵)


塔の最頂部の屋根が四角錐で、てっぺんに「相輪」のようなものが乗っている。これは五重の塔をイメージしたものだという。このような日本建築の要素を取り入れた和洋折衷様式は「帝冠様式」と呼ばれるようになる。


帝冠様式は、各地の県庁舎などに影響を与えた。愛知県庁舎はその顕著な例で、もろに寺か城のような和風の屋根が乗っている。「帝」は「大日本帝国」の「帝」で、ナショナリズムの時代に、建築においても国民的な様式を求める社会的な心情が背景にあった。


そして、設計者自身も言っていたそうだが、フランク・ロイド・ライトの帝国ホテルの影響を受けている。外壁に使われているスクラッチ・タイル(表面に細かい溝がある)もそうだし、ライト的アール・デコ造形があちこちに応用されている。そして面白いことに、五重の塔的な屋根の形は。そもそもライトが日本建築からヒントを得て、帝国ホテルに使った様式だったという。(神奈川県立歴史博物館編「キングの塔誕生」による)

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