2017年10月29日日曜日

映画「ブレードランナー 2049 」

Movie  " Blade Runner 2049 "

オリジナルの「ブレードランナー」は、人類が終わった後の絶望的なディストピア世界と、それは科学技術の進歩がもたらした結果だ、という世界観を初めて提示した偉大な SF 映画だった。しかしその後、類似作がたくさん作られて普通になってしまった。だから今回、元祖ブレードランナーとしてはさらにその先を行く何かがあるかもという期待もしたが、実際の「2049」はまさに続編で、前作の枠からは出ていない。


酸性雨でどんよりした空気にかすむ建物、ビルが丸ごと捨てられているゴミ捨て場、子供たちが働かされている地下工場、などダークな世界のビジュアル表現はやはりすごい。


パトカーのデザインがシド・ミード的な形なので、今回も彼がビジュアルを担当したのか興味があったが、クレジットでは「Special thanks:Syd Mead 」だけだったので間接的な関わりだったのかもしれない。

2017年10月26日木曜日

「カンディンスキー、ルオー」展

Exhibition  " Kandinsky, Rouault, and their Contemporaries "


「カンディンスキー、ルオー」展を今やっているが、カンディンスキーが抽象絵画にいたる前の初期の作品が中心。なので上のポスターのような、これがカンディンスキー?  といった作品が多い。(汐留ミュージアム、〜12 / 20 )

カンディンスキーが発行した有名な雑誌「青騎士」の表紙があった。この雑誌が表現主義絵画の運動の中心になり世界中に広まっていった。日本に「蒼騎展」という絵画公募展があるがこれは「青騎士」からとった名前。(蒼=青)(自分も名前につられてちょっとだけ参加したことがあった。)

カンディンスキーといえばやはり「点と線から面へ」だ。この本は、形態の要素を絵画へと構成していく方法を示している。かつて日本でも多くの人に読まれた造形のバイブルのような本で、影響力が大きかった。

2017年10月23日月曜日

パリ グラフィック ロートレックとアートになった版画・ポスター展

Exhibition  " Prints in Paris 1900 : From Elite to the Street "

ロートレックを中心にした 19 世紀末のポスターと版画の展覧会。おなじみの作品が多いが、これだけまとまって観られるのは初めてかもしれない。

ロートレックの「ディヴァン・ジャポネ」は同名の店のポスター。当時流行の日本趣味の内装だったそうだ。展覧会のチラシのデザインは、この一部を切り抜いて使っている。(ロートレックが見たら怒る?? )

古いパリの写真を背景にした展示室もあり、ポスターが街の中に貼られていたこの時代の雰囲気を伝えている。(撮影可コーナー)

(三菱一号館美術館 10 / 18 〜 2018. 1 / 8 )


2017年10月20日金曜日

映画「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」

Movie   " The Price of Desire "

女流家具デザイナーのアイリーン・グレイとコルビュジエの物語。名声欲や愛欲のからんだ愛憎ドラマだから邦題はきれいすぎる。原題は「The Price of Desire 」つまり「欲望の値段」で、これはぴったりしている。

コルビュジエは例の有名なセリフ「住宅は住むための機械である」を映画でも言うが、アイリーンは「住宅は愛の営みを包む殻だ」と言い返す。彼女の設計した家が評判になるにつれて二人の確執が増していく。そして巨匠コルビュジエの俗っぽい人間像が見えてくる。

アイリーンの恋仇としてシャルロット・ペリアンが出てきたのにはおどろいた。日本に来るより前の若い頃の実話のようだ。(ペリアンは戦前・戦後に日本でインテリアデザインの指導をした。)

          アイリーン・グレイの作品がたくさん登場する。
( BUNKAMURA  ル・シネマ   10 /14〜 )

2017年10月17日火曜日

「怖い絵展」に無かった恐い絵

Fear in painting

「恐い絵展」が今開かれているが、ここにない恐い絵は他にも山ほどある。その中で個人的に好きな恐い画家は、ベクシンスキー、モンス・デジデリオ、ジョン・マーチン、の3人。「恐い絵展」は、絵の背後にある物語を知ると怖い、的な作品が多かったが、この3人は知識なしでも見ただけでズバリ恐い。


「終焉の画家」といわれるベクシンスキーの死と滅びの世界。

17世紀の画家モンス・デジデリオは文明が崩壊する悪夢を描いた。

ジョン・マーチンが描くこの世の終わりは究極の恐さ。(前回投稿の再掲) 

2017年10月13日金曜日

怖い絵展

Exhibition  " Fear in Painting "

怖い絵は好きなのでさっそく観たが、なかなか面白い。神話や歴史の怖い物語や、心の中に浮かぶ悪夢、などあらゆる種類の怖い絵が観れる。セザンヌなどの作品もあり、怖いものは普通に描かれてきたモチーフで、特殊なものではないことがわかる。美しいものを描くのが絵、という常識は一部分のことでしかないのだろう。
( 上野の森美術館 〜12 / 17 )


蛇足だが、今回はなかったが、個人的に最高に怖いと思うのはジョン・マーチンの絵。人間の行いが神様の怒りにふれて、この世が終わってしまうという究極の怖さ。左下に哀れな人間たちが見える。原子炉のメルトダウンとして見ると非現実的とは思えなくなる。

「神々の大いなる怒りの日」  ジョン・マーチン   1853 

2017年10月10日火曜日

オットー・ネーベル展

Otto Nebel Exhibition

オットー・ネーベルという人は今まで知らなかったが、チラシの文句にも「知られざる画家オットー・ネーベル、日本初の回顧展」とある。しかし作品は初めて見る感じがしないのは一見クレーによく似ているから。実際、ネーベルはクレーのバウハウス時代からナチ政権時代にそろってスイスに亡命するまでずっと交流があったという。

この人が建築出身だからか構成を感じる絵だ。いろいろな都市の印象を描いた「建築的景観ー構成される画面」というコーナーの作品がとくにそう。例えば下はイタリアのポンペイの遺跡がモチーフで、スタディ作品だが素晴らしい。


クレーやカンディンスキーの作品、バウハウスのデザイン、など関連作品の展示もあり、そのあたりに関心のある人にはとくにおすすめ。
( BUNKAMURA  ザ・ミュージアム、〜12 /17 )


2017年10月7日土曜日

池田学展 The Penー凝縮の宇宙ー

IKEDA Manabu Exhibition   "The Pen"

超満員で人の頭越しに見た。東日本大震災の津波がモチーフの「誕生」が撮影可。4m ×3mの大作の一部をアップで撮って、さらにその一部を拡大してみた。1日に10 cm 四方しか描けないという細かさが分かる。日本人的な繊細さと、日本人離れした構想の大きさが同居している。使用画材の展示があり、ペンとドクターマーチンのインク、および水彩だった。(日本橋高島屋、〜10 / 9 )


(ぐちゃぐちゃになった線路と、そこにからまった電車やバスや看板など。・・自然に負けた文明)

(がれきの山をよじ登る人間や、旋回する飛行機など。・・再生への希望)

2017年10月5日木曜日

ノーベル文学賞にカズオ・イシグロ

Nobel Prize 2017  :  Kazuo Ishiguro

やはり。前にも当ブログで書いたが、村上春樹よりカズオ ・イシグロの方が先にノーベル賞をもらうだろうとずっと思っていた。映画化作品も素晴らしかったが大部分は原作の力だろう。「わたしを離さないで」と「日の名残り」は強く印象に残っている。


2017年10月3日火曜日

映画「ドリーム」と「イミテーション・ゲーム」 

Movie  "Hidden Figures"  &  "The Imitation Game"

「ドリーム」をさっそく観てきた。数学のプロが宇宙衛星打ち上げで大活躍する話だが、同じく国家的大プロジェクトで数学者が貢献するという似た設定の映画として、2014 年の「イミテーション・ゲーム」があった。両方ともコンピュータが関わっている。AI が人間を越えようかという今、コンピュータ発達史としてこの二つを観ると面白い。

映画「ドリーム」
NASAで軌道計算係を務めた黒人女性が差別と闘いながら活躍する話。やがてコンピュータが導入されるが、まだ信頼性が低く人間が検算していた。本番の有人衛星打ち上げの日、急遽彼女が呼ばれる。ものすごいスピードで手計算で計算する。そして衛星は計算通り飛行してぴったりの位置に着水する。

映画「イミテーション・ゲーム」
これは超おすすめ映画。やはり実話で、第二次大戦中にイギリスの天才数学者がドイツ軍の暗号を解読する話。苦闘の末に暗号解読機を作り上げ、解読に成功するが、この功績はイギリス政府によって抹殺され、悲劇の人になってしまう。最後の字幕がかっこいい。「彼が作った機械を今日我々はコンピュータと呼ぶ」