また秋の公募展に向けて、制作の時期になった。ふだん、気軽にスケッチなどしているのは楽しいが、公募展はそもそも何を題材に描くかで悩むことから始まるむしろ憂鬱な作業だ。悩む原因のひとつは絵の大きさだ。
自分の参加している展では「20号〜50号」という規定になっている。しかし実際の展示を見ると、ほとんどの作品が最大限度に近いサイズだ。日展の場合だと100号に統一されている。100号というと幅 160cm になる。50号でも1mを越すので、描いているときの取り回しがたいへんだ。ところが、自室では巨大に感じた大きさも、会場に展示されるととても小さく見えてがっかりする。
公募展が「大きさ」を要求しているのは、スケッチ的な絵ではなく、タブローを求めているからだろう。実際、50号くらいになると、スケッチ的な絵ではもたなくなる。拡大縮小してもあまり価値が変わらない写真と違って、絵の場合は大きくなると、内容を変えないと大きさに耐えられない。とくにパステルや水彩は油彩よりもメディアそのものが強さの点で負けるのでなおさらだ。だから何を題材に、どう描くかというテーマ選びでいつも悩む。
さらに、スケッチとタブローの違い自体があいまいで、また悩む。辞書で調べると「スケッチ、デッサン、習作などでない完成した作品で、作者の思想や構想が画面に組み立てられたものを指す。」となっている。おそろしいことが書いてあるが、なんとなく、実感としては分かる。だから普段小さいスケッチのときから大きい作品にできるかどうかを意識しながら描いてネタを貯めておくといいのだろう。
問題は定義にある「思想や構想を画面に組み立てる」という部分。それが具体的にどういうことなのかについて、公募展の審査員などもやっている先生に聞いてみたことがある。「先生、公募展に入選はしてもなかなか賞がもらえないんですが、どうすればいいんですか?」というずうずうしい聞き方で。すると、そもそも公募展は、絵画の「研究」をする目的で作家たちが集まってグループで活動したことからスタートし、それが大規模な公募展に発展してきたケースが多い、だから、「研究的な態度」で描かないとだめですよ、という答えだった。「思想や構想」よりは「研究的」のほうが少し分かりやすくなったような気がした。
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