The Flying Classroom
図書館の児童書コーナーを通ったら、たまたま「飛ぶ教室」が目についたので借りてみた。小学生の頃、少年少女文学全集を全巻持っていたが、「飛ぶ教室」だけは何度も何度も読み返した愛読書だった。読むのは約 7 0 年ぶりになる。児童文学の最高峰とされるエーリッヒ・ケストナーのこの小説は、主人公を子供時代の自分をモデルにしている。寄宿制の小中一貫校での子供たちの生活の物語だ。親から捨てられた少年や、貧乏で苦しんでいる少年や、頭はいいけれど気の弱い少年や、腕っぷしは強いけど成績の悪い少年などが登場し、喧嘩やいじめやグループどうしの抗争などがある。それを通して、知恵と勇気を持って生きることの大切さを描いている。
ケストナーは「まえがき」で世の児童文学書を批判している。「ずるい著者たちは、初めから終わりまで面白がらせ、楽しさで夢中にさせようとして、子供たちを騙している。しかし、子供たちは時にずいぶん不幸になるものだ。みなさんはそのことを大人になっても忘れないでほしいのです。」
その上で、「人に殴られた時、勇気と賢さを持ちなさい。賢さのともなわない勇気は不法です。勇気の伴わない賢さはくだらんものです。世界史には、ばかな人が勇ましくなったり、賢い人が臆病だったりした時がいくらもあります。それは正しいことではありません。」
つまり子供向けだからといってこれはファンタジーのような本ではない、現実の世界をリアルに見つめるのだと言っている。今読むとそれについて思い当たることがある。ケストナーがこれを書いたのはヒトラーが政権を取った 1 9 3 3 年で、反体制的な書物は禁止される。自由主義者で平和主義者のケストナーの著書も発刊禁止になる。上記の「まえがき」は、そのことに対する反抗の気持ちの表われのように思える。
しかし「飛ぶ教室」だけはあまりにも人気がありすぎて禁止できず、ナチス時代のドイツの子供たちに読まれ続けたという。そして今も世界中の子供に読まれている。また戦後3回映画化されている。