「Face Value」& Gogh
人間の目は黒目の両側に白目があって横長だが、この縦横比は霊長類の中で最大だそうだ。地上で生活している人間にとって便利なように、眼球の左右方向の可動範囲が大きくなっている。樹上生活のオランウータンなどは、人間ほど横長でなく、上下も見やすくなっている。人間は逆に、眼球の動きだけで空を見ることができず、首を曲げて見上げなければならない。(以上「第一印象の科学」より)
人間はそういう目で世界を見ているから、絵画、写真、TV、映画、など画面は横長だ。
ゴッホの遺作とされる「カラスの群れ飛ぶ麦畑」は、縦横比が約2:1の超横長画面だ。反対方向へ向いている3本の道路が同時に描かれているから、眼球の可動範囲を超えていて、パノラマ写真並みだ。これは目で見た通りの風景ではなく、妄想で見た風景にちがいない。超横長の画面で全世界を表し、それが麦畑と空しかない空虚なものであることを表現しているのだろう。間もなく自殺するゴッホの心中を暗示しているようだ。
2019年10月31日木曜日
2019年10月29日火曜日
光を反射する静物
Reflections
金属とガラスのモチーフで、材質による光の反射のしかたの違いに注目して描いた。
⚫︎ マグカップは全光沢の銅メッキのなので、テーブルクロスの格子を鏡面反射している。ハイライトのコントラストも強い。
⚫︎ ステンレスのアイスペールはヘアライン処理なので拡散反射している。ハイライトはマグカップよりもやや鈍い。隣にある物の色だけをぼんやりと反映している。
⚫︎ ミラーは平面の鏡面反射なので、まわりにある物の正像をはっきり結んでいる。しかしガラスを2回通過しているので、現物よりは弱い像になっている。
⚫︎ ビー玉とウィスキーは球面で、反射率の高いガラスなので鋭いハイライトがある。透過光の部分にだけ固有色(ビー玉の緑とオレンジ、ウィスキーの琥珀色)が見えている。
⚫︎ テーブルクロスは、光を完全吸収して反射はない。
金属とガラスのモチーフで、材質による光の反射のしかたの違いに注目して描いた。
⚫︎ マグカップは全光沢の銅メッキのなので、テーブルクロスの格子を鏡面反射している。ハイライトのコントラストも強い。
⚫︎ ステンレスのアイスペールはヘアライン処理なので拡散反射している。ハイライトはマグカップよりもやや鈍い。隣にある物の色だけをぼんやりと反映している。
⚫︎ ミラーは平面の鏡面反射なので、まわりにある物の正像をはっきり結んでいる。しかしガラスを2回通過しているので、現物よりは弱い像になっている。
⚫︎ ビー玉とウィスキーは球面で、反射率の高いガラスなので鋭いハイライトがある。透過光の部分にだけ固有色(ビー玉の緑とオレンジ、ウィスキーの琥珀色)が見えている。
⚫︎ テーブルクロスは、光を完全吸収して反射はない。
「Reflections」 パステル、ミ・タント紙、45cm × 36cm
2019年10月27日日曜日
2019年10月25日金曜日
グリッド法による下絵の拡大と転写
先日展覧会で、先輩の画家の水彩画を見たら、うっすらとグリッドが見えたので、ご本人に「見えましたよ」と言ったら「バレたか」と笑っていた。エスキースや習作などの下絵を本番で拡大するのに、自分も含めてほとんどの人が「グリッド法」でやっているから、「バレる」というほどのことではないが、この話で盛り上がった。昔の技法書には、スライドプロジェクターを使う方法が載っていたが今時そんなことをやる人はいない。松本竣介はトレペに本番と同じ大きさの下絵を描いて、それをカーボン紙で転写するやり方をしていたが、これは大きいサイズの絵では無理だ。やはりグリッド法がいちばんいい。
ミケランジェロの伝記映画「華麗なる激情」で、大聖堂の壁画を描くシーンがある。グリッド法で拡大した線画を壁に転写するやり方が詳しく描かれていて、なるほどそうやっていたのかと感心した。
(左)ミケランジェロの下絵を大きい紙に拡大し、線に沿って弟子がキリで穴を開ける
(右)紙を壁にあてがい、穴の上から墨を擦り込む
(左)白い漆喰の上に点線で転写される
(右)点線をつないで線にしていき、線図を完成させる
最後にミケランジェロ本人(チャールトン・ヘストン)が着色する。フレスコ画は漆喰が生乾きのうちに描かなければならないので、一回に描く人物は一人だけで、これを繰り返して群像にしていく。
2019年10月23日水曜日
静物「にわとりの水差し」
写真の「ソフトフォーカス」と同じように描く実験をしてみた。光を拡散させるのがソフトフォーカス・フィルターだから、それと同じことをしてみる。色の境界を滲ませて、エッジを和らげ、光が「散っている」感を出す。
「にわとりの水差し」 ソフトパステル、サンドペーパー、40cm × 26cm
2019年10月21日月曜日
2019年10月19日土曜日
2019年10月17日木曜日
2019年10月15日火曜日
「ビー玉」の観察とスケッチ
ビー玉をモチーフにした静物画を描こうと思い、まず一個を観察してスケッチしてみた。
「光源の光による明暗」+「窓など室内の鏡面反射」+「裏側からの透過光」の3つが複雑に組み合わさっていることがわかった。
2019年10月13日日曜日
2019年10月7日月曜日
静物画を活き活きさせる透過光 サブサーフェス・スキャタリング
Subsurface Scattering
静物画で果物を描くとき、「ぶどう」と「オレンジ」をよく描く。この二つは他の果物と違って果肉が半透明なため、透過光が生じる。その光を描いて「ぶどうらしさ」や「オレンジらしさ」を表現するのが面白い。
果肉を透過した光が、影の中でぼーっと光る。左の失敗作のように表面の光しか描かないと、さくらんぼのように見えてしまう。右のように透過光を描くと(誇張しているが)ぶどうらしくなる。
オレンジを逆光にすると光をよく通す。肉厚の薄い部分ほど明るくなりグラデーションができる。右側の絵は逆光ではないが、それでも影で暗くなるはずの右の側面が透過光で明るくなっている。
液体の場合は、果物よりもっとはっきり透過光が見える。ワインが手前からの光で明るいのと同時に、反対側にも後ろからの反射光の透過が見える。これを描くとワインの透明感が表現できる。
見えている「表面」だけではなく、透明なものは、後ろにもう一つの「表面」があり、そこから入る光を意識しなさいということで、絵画の用語で「サブサーフェス・スキャタリング」という言葉がある。「サブサーフェス」は光が入ってくる後ろ側の表面を指し、「スキャタリング」はサブサーフェスから入った光が拡散しながら透過して出てくることを指す。これは人間にもあり「耳たぶ」を透過する光を描いた人物画を見ることがある。
静物画で果物を描くとき、「ぶどう」と「オレンジ」をよく描く。この二つは他の果物と違って果肉が半透明なため、透過光が生じる。その光を描いて「ぶどうらしさ」や「オレンジらしさ」を表現するのが面白い。
オレンジを逆光にすると光をよく通す。肉厚の薄い部分ほど明るくなりグラデーションができる。右側の絵は逆光ではないが、それでも影で暗くなるはずの右の側面が透過光で明るくなっている。
液体の場合は、果物よりもっとはっきり透過光が見える。ワインが手前からの光で明るいのと同時に、反対側にも後ろからの反射光の透過が見える。これを描くとワインの透明感が表現できる。
見えている「表面」だけではなく、透明なものは、後ろにもう一つの「表面」があり、そこから入る光を意識しなさいということで、絵画の用語で「サブサーフェス・スキャタリング」という言葉がある。「サブサーフェス」は光が入ってくる後ろ側の表面を指し、「スキャタリング」はサブサーフェスから入った光が拡散しながら透過して出てくることを指す。これは人間にもあり「耳たぶ」を透過する光を描いた人物画を見ることがある。
2019年10月5日土曜日
松本竣介の制作過程
Shunsuke Matsumoto
神奈川県立近代美術館(鎌倉別館)に松本竣介のコレクションがあり、時々常設展で展示されるが、10 / 12 からまた見れるようだ。画集に載っている制作過程が面白いので、「Y 市の橋」の例で紹介を。(写真:「松本竣介展」図録より借用)
現場でのラフスケッチを繰り返し、構想を練っていく。まだ主題は定まっていない。
固まった最終案の下絵を、ファイナルと同じ大きさのモノトーンで描く。構図を決めるのは「明暗コントラストの配分」だという考え方が見てとれる。
神奈川県立近代美術館(鎌倉別館)に松本竣介のコレクションがあり、時々常設展で展示されるが、10 / 12 からまた見れるようだ。画集に載っている制作過程が面白いので、「Y 市の橋」の例で紹介を。(写真:「松本竣介展」図録より借用)
現場でのラフスケッチを繰り返し、構想を練っていく。まだ主題は定まっていない。
固まった最終案の下絵を、ファイナルと同じ大きさのモノトーンで描く。構図を決めるのは「明暗コントラストの配分」だという考え方が見てとれる。
その上にトレーシングペーパーを乗せて、製図板の上で定規を使ってトレースして線図を描く。その裏面に木炭を塗って、キャンバス上に転写する。イラストレーションなどではおなじみの方法だが、画家でこれをやる人はまれだろう。この無機的な線図によって、「味」などといった曖昧さや、情緒性などといった主観的要素を完全に排除している。
耐震建築のように揺るがない構築的な絵だが、図面を描くように「絵を設計」していることが、この制作過程からわかる。
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2019年10月3日木曜日
アメリカン・イラストレーションと ヴィネット技法
Vignette
アメリカン・イラストレーションで多用された「ヴィネット」(Vignette)という技法がある。タブローが四角の額縁で周囲とはっきり区切られるのに対して、雑誌のイラストレーションは絵だけを区切らずに、テキストなどと組み合わせて、ページ全体に溶け込むようにレイアウトされる。そこでできる余白の面白さが活きるような、動きと変化に富む構図が工夫されていた。スクラップブックからいくつか拾ってみた。
なお「Vignette」は、昔の装飾本の各章の初めに、つる草の模様を施したことから来ていて、Vine(つる草)が語源らしい。
アメリカン・イラストレーションで多用された「ヴィネット」(Vignette)という技法がある。タブローが四角の額縁で周囲とはっきり区切られるのに対して、雑誌のイラストレーションは絵だけを区切らずに、テキストなどと組み合わせて、ページ全体に溶け込むようにレイアウトされる。そこでできる余白の面白さが活きるような、動きと変化に富む構図が工夫されていた。スクラップブックからいくつか拾ってみた。
なお「Vignette」は、昔の装飾本の各章の初めに、つる草の模様を施したことから来ていて、Vine(つる草)が語源らしい。