2017年1月29日日曜日

交番のデザイン

Koban

30年くらい前に警視庁が、「ポリスボックス」の名前通りの「箱」だった交番を新しいデザインに変えようということで都内数十ヶ所の交番を建築家に設計させた。最近それを見て回ったがとても面白い。小規模で単純な機能の、ただ親しみやすくて目立てばいいという建物なので、デザインの自由度が高いのだろう。そのぶん力作や駄作いろいろだ。


(左)数寄屋橋交番。幾何的形態と縞のカラリングがちょっとポストモダンを思わせる。
(中)京橋交番。こちらの3角屋根は和風。もとここにあった橋(京橋)の親柱が保存されているのが写真左下に見えるが、これをモチーフにしたデザイン。
(右)上野公園交番。場所柄モダンアートの作品のようなデザイン。迫力がある。


(左)日比谷公園前交番。バウハウス的モダンデザインの超ミニ版といった感じで、なかなか好ましい。写真では1階がよく見えないが、実物はそこもいい。
(右)池袋二又交番。曲面だけで構成したデザイン。造形レベルが高い。

2017年1月26日木曜日

絵画と「テーブル」

"Table"

「テーブル」の意味について書いた高山宏という人の本がとても面白い。
(「終末のオルガノン」作品社、1994 )

「テーブル」はその周りに座る人たちの関係を秩序づける。食事場面での夫婦や親子といった家族秩序や、座る席順が地位という社会秩序を表す(日本の上座 / 下座も同じ)など。そういう意味の表現として、テーブルはたびたび絵画に登場する。そういえば「ちゃぶ台返し」という日本語があるが、ちゃぶ台(=テーブル)をひっくり返すことが既存の秩序を壊すことを表している。

ほとんどの静物画のモチーフは「テーブル」の上に置かれているが、それによってバラバラだった物どうしに関係ができて、絵に秩序が生まれる。

モノとしての「テーブル」以外にも、データを見える化した「図表」も英語では「テーブル」だし、本の内容が一目でわかる「目次」も「テーブル」。テーブルと同じ語源の「タブロー」はスケッチと違い、何らかの主張をする絵画の意味。またテーブルと類語の「タブレット」は、もとは絵を描く板のことだったが、今では絵を表示する情報端末の意味で使われる。・・・といった具合に「テーブル=物事の秩序化」という切り口が面白い。

2017年1月23日月曜日

工場地区の風景

A rainy day of the factory area

歩いて1時間くらいの海の近くに火力発電所やセメント工場などの大きな工場が並ぶ地域があり、その周辺地区には中小企業の工場や倉庫などが集まっている。ガランとして色彩感もない所だが、素っ気ない雰囲気がなんとなく好きでよく散歩に出かける。雨の日の風景は特にさびしい。

2017年1月20日金曜日

映画「アイ・イン・ザ・スカイ」

Movie  "Eye in the Sky"

公開中の「アイ・イン・ザ・スカイ 」を観た。現代の最先端の戦争の実態を生々しく描いていてなかなか面白い。

衛星カメラがテロリストが隠れている家を見つけると、鳥ドローンを屋根の上に飛ばして出入りする人間を確認する。そして虫ドローンが家の中に入り行動を監視する。最後に爆撃ドローンがミサイルを積んで発進する。このように今の戦争は何千キロも離れた場所にいる標的をすぐ目の前にいるように見ることができ、その標的をピンポイントで殺すことができる。そして全てが無人で行われる。

ところが標的の家の前で突然少女がパンを売り始める。ミサイルを発射すれば少女も一緒に吹き飛ぶ。ジレンマが始まる・・・

2017年1月17日火曜日

映画の階段のシーン

Film scene : A baby pram rolling down steps

「アンタッチャブル」という映画を見ていたら、刑事が駅の階段で犯人を尾行している場面で、階段の上にある乳母車をちらちらアップで写すので、あれだなと思って見ていたらやっぱりそうだった。コットン、コットンと乳母車が階段を転がり始める。母親がきゃーと叫ぶと、刑事は思わず乳母車を止めようとして身をさらしてしまい・・・
これ、「戦艦ポチョムキン」の有名なシーンの引用だ。階段を転がる乳母車を使って緊迫感と悲劇を演出するのはエイゼンシュテインの大発明だった。しかし調べたらこの場面がいろんな映画で引用されているというのは有名な話のようで、引用作品のリストまで公表されている。べつに発見ではなかった。

このリストにもあった「未来世紀ブラジル」は、情報化社会をパロディーにしたハチャメチャな作品で面白いのだが、やはり「戦艦ポチョムキン」の、銃を構えた兵隊が横一列に並んで階段を降りていくのをそっくり引用したシーンがある。
90 年も前の「戦艦ポチョムキン」が現在の映画に与えている影響力を改めて思う。

2017年1月14日土曜日

映画「この世界の片隅に」

Movie  "In this Corner of the World"

話題の「この世界の片隅に」を観た。主人公の女性は絵を描くことが大好きで、そのシーンが繰り返し出てくる。それが「片隅」から「世界」を見ながら自分の居場所を確かめようとする主人公の生き方を表現している。

「ある環境にポツリと取り残されたようなちっぽけな人物が生きた、想像力と現実との柔らかい移ろいとしての世界を描き出す。まさに『この世界の片隅』において、すずは現実と創造の世界を混ぜ合わせているようだ。」(「私たちの右手の行方」土居伸彰)


(写真:「ユリイカ」2016年11月号より)

2017年1月11日水曜日

?なビル、不条理な建築

Architecture of the absurd

これ Photoshop でいじったわけではなく、本当にこのとおりのビルが銀座のまんなかにあるのを発見した。調べたら某有名企業のショウルームとして5年くらい前にできたらしいが、上を見て歩かないので気がつかなかった。

アメリカ人の建築家が書いた「不条理な建築」という本に世界中のナンセンスな建物が紹介されているが、その中にこんな建築は日本だけには無い、と書いてある。それは『日本の建築家は、人々や彼らが暮らす環境に尊敬の念を持っているので、西洋にありがちな自分を売り込むためだけのエゴむき出しの無責任な建築は生まれない』からだと言っている。

しかしこのビルは、ザハ・ハディドのデザインを景観を壊すからと引きずり下ろした "日本の建築家" の作品だ。


2017年1月9日月曜日

宇宙と芸術展

Exhibition  "The Universe and Art"

終了間際に見に行った。(森美術館 〜1/9)

ポスターのロケットの絵がよくない。宇宙飛行士や宇宙ステーションの話かと思ってしまう(それも少しあるが)。「宇宙」は古来から、世界とはどうなっていて、自分たちはその中のどこにいるのか、と人間が思い悩んできた問題だが、その意味での「宇宙」だ。古今東西の様々な人々が想い描いた宇宙の記録で、曼荼羅やかぐや姫やガリレオなど盛りだくさんで予想以上に面白い。

映像インスタレーションの制作グループ「チームラボ」の作品が目玉で、なかなかすごい。宇宙空間の中で浮遊しているようで平衡感覚を失いそうになる。(かつての教え子がこのグループで活躍しているのがうれしい) 
映像→ https://youtu.be/a9Uyk4H4bQw


2017年1月6日金曜日

ブレードランナー続編

Blade Runner

「ブレードランナー」の続編が今年の秋に公開と決まったようだ。期待の声が高まっているが、まだチラ見せ的な予告映像しか出していない。前回はシド・ミードが「ビジュアル・フューチャリスト」という肩書きで美術に全面的に関わった。セットや小道具のデザインのほかマットペイントもやっていた。下は超高層ビルのシーンの原画( Syd Mead 画集「Oblagon」より)と実際の映像だが、近未来の世界をあえてゴシック風建築で描いていたのがすごかった。今回もシド・ミードが参加しているのかどうか、とても興味がある。チラ見せ映像でも、難破した宇宙船やローマ建築風の廃墟など、シド・ミード的な画面が出てくるがどうだろう?
 

2017年1月3日火曜日

ライエンデッカーのイラストレーション

The Art of  J. C. Leyendecker

ライエンデッカーというイラストレーターの作品集を入手した。1920 年代アメリカで雑誌の表紙や広告で大人気になった人で、特に紳士服やシャツの広告で男性をセックスシンボルとして描いた初めての人と言われている。


上のような ARROW という会社の襟の丸いシャツの広告をたくさん手がけたが、そのおかげでこの商品が男性ファッションとして一世を風靡したといわれている。作家のフィッツジェラルドが活躍したのも同時代で、小説に登場する男性像のイメージはこの広告の影響を受けていたそうだ。さらには、その作品を映画化した「華麗なるギャツビー」でロバート・レッドフォードが着ているのがそのシャツで、このイラストレーションの影響力の強さがうかがえる。